ネミ湖畔の聖なる洞窟、サン・ミケーレの聖窟

 ローマから南方面へ車で30分くらい行ったところに、小さなカルデラ湖、ネミ湖があります。その湖畔周辺にあると言われている大天使ミカエルを祀る洞窟目指して、探検しました。

サンティッシモ・クローチフィッソ教会の庭から望むネミ湖

 「金枝篇」の舞台であるネミ湖周辺は、月と狩猟の女神、ディアナ神を祀る神殿がかつてあり、太古の昔から聖なる森として大切に守られていました。今でも、女神ディアナの神殿跡と、この神殿が水中に沈まないよう湖の水位を保つために紀元前6世紀に掘られた1600mもの長さがある排水溝を見ることができます。

6世紀まで使用されていた水道跡
6世紀まで使用されていた水道跡
古い水飲み場跡
水車小屋跡

 また、この辺りは良質な湧き水が豊富で、古代の水道跡や水車小屋跡などもあります。

サン・ミケーレの聖窟入り口

 断崖絶壁のような森の中、山道はとうの昔に崩れ去り、GPSだけを頼りに彷徨いながらとうとう辿り着きました!

サン・ミケーレの聖窟内部

 この日30度を超える猛暑でしたが、内部はひんやりと涼しく、汗と埃にまみれた私たちにとってここはまさにオアシスでした。約30m2ほどの広さで、奥にコリント様式とイオニア様式の柱に支えられた切妻屋根の小さな天蓋と祭壇があります。

聖ペトロと聖ベルナルディーノ 文献によると右側に聖セバスティアンも描かれているらしい(私たちは見逃してしまいました)。
大天使ミカエル
聖母子と聖セバスティアン
キリスト磔刑図 左右に聖母マリアと聖ヨハネ、足元に祈りを捧げる村人、十字架の下にアダムの骸骨を確認できる。

 痛みが激しいものの、13世紀のフレスコ画が残っていて、図像のモチーフや細部を確認することができます。入り口の左隣にあるフレスコ画の聖ペトロが持つ聖書に「ペトロの第1の手紙」第5章8-9節が書かれていることや、祭壇の左側に描かれたキリスト磔刑図に描かれたネミの村、釘を打たれたキリストの足から流れる血などを見ることができます。

漆喰による天使の羽

 入り口の上に、漆喰による天使の羽を発見しました。たぶん、大天使ミカエルの羽でしょう。

 いつからこの洞窟で大天使ミカエルが祀られるようになったかはわかっていませんが、中央イタリアで大天使ミカエル信仰は8世紀以前からあったと言われており、その多くが洞穴や山の頂上などが信仰の場でした。この聖ミカエルは悪魔を退治する大天使なので、ディアナ神殿があったように元は異教徒つまり悪魔の聖地であったネミ湖周辺をキリスト教に改宗するために、大天使ミカエルは必要不可欠でした。

断崖住居跡
先史時代の墳墓

 聖窟の近くに、先史時代の墳墓や断崖住居跡があります。はるか昔からこのネミ湖の森は、人々の生活をあたたかく見守ってきたのですね。

 4世紀、初期キリスト教時代のサン・ニコラ教会跡です。コンスタンティヌス帝がキリスト教を公認した頃建造された、歴史的にも価値のある教会でした。教会の裏には、紀元前4世紀からあったエゲリアの浴場跡も見ることができます。

サン・ミケーレの聖窟内にて

 ネミ湖があるカステッリ・ロマーニ地方は避暑地とはいえ、この日はとても暑く、そのまま湖に飛び込んでしまいたくなるくらいでしたが、インディアナ・ジョーンズになったようなスリリングな冒険でした。

写真:アレッサンドロ・スタデリーニ・ブサ Alessandro Staderini Busà

アレッサンドロのインスタグラム

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